五十音頭韻ポエムは〜ほ
佐々宝砂
[は]
蜂の翅より
はるかに儚い翅です
はらはらとはなやかに
花火ははぜるので
はたはたとはげしく
旗ははためくので
儚い翅は
はずみはねる春に
はにかみ
はらみはぐくむ春に
恥じらい
歯がゆいからって
はやしたてないで
派手に励まさないで
果てて墓場に
灰掃き寄せるまでには
儚い翅も
羽ばたくでしょう
裸の針も
はじけるでしょう
[ひ]
昼日中ひだまりにあっても
皮肉な比喩はひずみながら冷えゆき
姫君は冷やかされ
聖は左向きにひたすらひざまずく
火の襞よ
光に惹かれる雲雀の雛よ
櫃に秘められたひそかな非望を
ひた隠す一筋の非望を
ひとおもいに
広げよ
低く弾く悲歌は
久しく続く日照りの日々に
ひりひりと響き
ひととひとは乾涸らびるだろう
姫君はひねこび
聖はひねりつぶされ
引き合い引き去り引き上げ引き下ろし
ひしめきあいながら
ひととひととは
悲鳴を響かせ合うだろう
[ふ]
不安が
不慣れな不揃いの服のように
吹き寄せ膨らんでゆく
笛を吹こう
吹き飛ばそう
不意打ちの触れあいを
不穏な不毛の深い淵を
塞いでも振り向いても
不安は拭きとれないから
笛を吹こう
吹き飛ばそう
封じたままの文を
ふてぶてしい船だらけの船着き場を
踏み荒らされたふるさとを
袋にいれて蓋をして
笛を吹こう
吹き飛ばそう
吹き飛ばしたら
ふかふかの布団に伏してしまおうよ
[へ]
凹んでへどもどしながらも
屁とも思わぬへっこき虫は
へこたれない
へし曲げられてもヘマしても
へなちょこ蛇はへたりもせずに
減らず口
兵隊さんは平和が下手で
塀の隔てにへべれけで
へっこき虫は
へなちょこ蛇は
兵隊さんにへつらわない
塀の隔てにへりくだらない
へそはなくともへそ曲がりに
へそはなくともへそで茶を沸かし
へらへらとへろへろとへなへなと
へっぽこにヘボに
屁理屈こねて
へえ変なのと言われても
平穏へっちゃら屁のカッパ
[ほ]
星祀るほこらの
ほろほろ螢にほだされて
ほかほかとほてる頬も
ほどなくほとびるでしょう
吠え哮る法螺貝も
骨太な砲兵も
欲しくない
欲しいのは星だけ
他でもない星だけ
葬られていた骨をほどけば
ほら
星祀るほこらに
北極星ひかる
ほとばしる
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五十音頭韻ポエムポエムス(パキーネ詩編)