水は低いほうへ流れてゆく
コトリ


水は低いほうへ流れてゆくのだよ

 

空がようやく白みはじめた
霧の山小屋
去りゆく人の走り書き



めざとくえらんで流れ込み
いつかは、とまる

そして


そして
出し惜しんだ
水筒の水は

主を亡くした
あの金魚鉢は



そして
腐敗する
うごかない  水



夢を叶えて 久しい
戦利品の少女は
未だ深い夢の中
けれど画用紙に描く色は
日毎に乏しくなっていた



どうか きみは
あたたかい場所に
眠らないで
方向は
そんなに大きな問題ではないから
ひたすら抗い続けてくれ



到達地点はなく
そのすがたこそが
澄んだ川



腐りきった指一本 
触れずに小屋を発った


瞬間
すでに
彼もまた川









自由詩 水は低いほうへ流れてゆく Copyright コトリ 2005-07-26 00:54:54
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