水は低いほうへ流れてゆく
コトリ
水は低いほうへ流れてゆくのだよ
空がようやく白みはじめた
霧の山小屋
去りゆく人の走り書き
めざとくえらんで流れ込み
いつかは、とまる
そして
そして
出し惜しんだ
水筒の水は
主を亡くした
あの金魚鉢は
そして
腐敗する
うごかない 水
夢を叶えて 久しい
戦利品の少女は
未だ深い夢の中
けれど画用紙に描く色は
日毎に乏しくなっていた
どうか きみは
あたたかい場所に
眠らないで
方向は
そんなに大きな問題ではないから
ひたすら抗い続けてくれ
到達地点はなく
そのすがたこそが
澄んだ川
腐りきった指一本
触れずに小屋を発った
瞬間
すでに
彼もまた川