浮島
椎名乃逢

夕陽の、
あの世界の全てを焦がしかねない熱量を持つ
直情的な眼差しを
一身に受け止めるたおやかな雲
火傷を恐がらずただ信じて手を広げ
柔らかな身体で抱き止めるその姿が
僕を魅了してならないのです
夕焼けが美しいのは
ひとえにあの雲があるおかげで
貫いて僕の目を狙う光も
雲を通ってまぶたを撫でるレースに変わる
あの雲を見るたびに
僕は安心を覚えるのです
雲があるから、
あの夕陽のような焦がれ方しかできない僕も
そのままでいていいのだと


自由詩 浮島 Copyright 椎名乃逢 2005-07-25 13:02:39
notebook Home