夏服の模様
落合朱美
グラスの縁を滑り落ちる
雫のまるい膨らみの中に
千切りそこねた夏景色
麦藁帽子の少女の幻を閉じ込めて
氷の欠片をもてあそぶ指先の
すこし伸ばした爪は
太陽と同じ色に染められて
行き場をなくして戸惑っている
細い煙草に火をつける
馴れた手つきも
日焼けを嫌う蒼白い首筋も
向日葵畑には不似合いで
華奢な踵のサンダルも
レースの日傘も
たおやかに見えて
ほんとうは意地っ張りの象徴
はしゃぎすぎた後の代償のような
沈黙の気まずさに堪えかねて
夏服の皺を伸ばす仕草を
繰り返している
自由詩
夏服の模様
Copyright
落合朱美
2005-07-25 01:26:57
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