ひとみ かがみ
木立 悟
闇が降りてくる
大きく静かな
ひとつのまばたきが
ゆっくりと夜を動かしてゆく
音もなく仕方なく触れあうものたちが
手のひらで互いの目をふさぎあう間も
夜の蒼の流れは止まず
ほんとうに求めあうものたちを引き寄せてゆく
雲の切れ間の星が血のようにはばたき
川辺に散らばる破片めがけて降りてくる
死でもなく
木でもなく
土にとどくもの
鎖を揺らす風をつくるもの
白くひろい世界の
ただひとりのための工房で
鏡をつくりつづけるものの背が
鏡のなかでかがやいている
目から離れた手のひらが
他の手のひらに触れたとき
刃の星も
赤い破片も
流れに沈んだ未完の鏡も
何もないはずの世界のなかに
自身を映す瞳を見つける