ビオトープ
望月 ゆき

深くまでつづいている
いつか見失った道の先にある、森で
夏の日
ぼくたちは、生まれた


頭上には空があった
ぼくたちと空の間を通り過ぎてく風があった
ふりそそぐものは、光
光とも見まごう、まぶしい未来
ぼくたちは歩き出した
手をつないで
どこに向かうかなんて決めてなかったけど
それでよかった


立ちどまることを忘れてぼくたちは
屋根までつづくツタをのぼったり
ときどき
追いかけてくる雨雲から逃げて
猛スピードで走った
空はいつも青いわけじゃなく、風は心地よいばかりではないと
いたずらに知らされた


未来からはみだして、
世界から隔離されたところで
生きてるみたいね、って
だれかが言ったけど
みんな聞こえないふりをしていた
もう、夢の中でしか夢を見るのはやめよう
いろんなこと忘れてしまったけど
手をつなぐことだけ、忘れなかった


丸く、ガラス玉のように危ういその上で
きりがないほど笑って
何万回も見た夢のことや
ときどきふいにおそってくる思いを忘れた
忘れたふりをして今を笑った
手をつなぐことだけ、忘れなかった


夏の日
ぼくたちは生まれた
いつか見失ってしまった道の先にある
あの森で
光りかがやく未来とともに


なにひとつ手に入れてないけれど
なにひとつ失ったものはない


つないだままの手のひらの間に
入りこんだままの
あの日ふりそそいだ光のカケラ
ぼくたちはいつか
つないだ手をほどいて気づく
未来はずっと
この手の中で生きていた




自由詩 ビオトープ Copyright 望月 ゆき 2005-07-24 10:52:17縦
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