夏の雪原
コトリ


おしげもなく 陽の光がふりそそいでいる
3月、真昼
白野原に反射して 
レース越しの彼女の庭は  
照明具よりずっとまぶしい
ああ、ぴったりの名前がやっとわかった

風がとまった  夏の雪原   

とけだしてまろーんとなった雪には 
きつねのあしあと 
こどものあしおと
留守のあいだに ひとがしんだという はなし
両耳から いくつも
              

すっかりわすれてしまっていたことを 
わすれていなければ
いま なにか が 

考えないわけではなかった        
                   でも わすれてしまうのだね
  
おなじこの陽の直線が幾重に交差していた 
うす暗い うす明るい部屋で何度も

その先は
                  ああ わすれてしまうのだね


雪の庭を
はだしであるいた
彼女は
このやわらかい白い空間を 名付けたいとおもった



自由詩 夏の雪原 Copyright コトリ 2005-07-23 16:46:51
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