道路の真ん中に寝転んでみた。
真っ青ないい空が広がっていた。
こんなことで単純に、自分が特別な生き物になったような気がして、
笑ってしまった。
ふと昨日のことを思い出す。
小さな箱に押し込められてしまった、あの人の真っ白な骨。
いったいどんなふうに燃えたんだろう。
どれくらいの温度で。何色の炎で。
僕には、
あの部屋の中であの人がどんなふうにこの世から消えていったのか、
知るすべもない。
あんなに泣いたのに、今は笑えるなんて。

みんな泣いたのに。

どんなに悲しんでも、どんなに悔やまれても、燃えてしまったらおしまいだ。
ただの骨になってしまう。
笑っていたことも、泣いていたことも、怒っていたことも、
その声も、全部一緒に燃えて灰になってしまう。
そうじゃなければ、過去と呼ばれてだんだん見えなくなっていく。

だんだん見えなくなって、
あの人は誰にも見えないけれど、この空の上に拡がっているんだろう。

起き上がってみる。
僕は何の変哲もなく、特別でも何でもない。
淋しいけれど、もう涙は出ない。
僕の中のあなたはやっぱりのんびり歩いているその人だ。
穏やかな真昼、真っ青ないい空が広がっている。


自由詩Copyright  2005-07-23 00:27:24
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