「不思議だね、みんな死んだらいいのにね」ってビルの65階の夜景
もう少し待って 60年くらい経てばさみしさが死因で死ねる
6月、梅雨がはじまらない
遠回りしていた虹をていねいに7つにはがしてあの子に赤を
予報では明日世界が滅ぶから 朝からテレビにモザイクが入る
黒揚羽は綺麗だと思う 週末の恋の予定をくゆらせながら
あの子には目がある たとえばぼくの証明をたやすくやめてしまえるための
7月、全国的に雨
彦星は溺死しちゃえばいいのにね また君のない夏がはじまる
「歪みすぎ」「歪みすぎ」「歪みすぎ」まだ鳴っていないギターを呼ぶスピーカー
ドーナツの穴を焼かずに食べながらもう少しひどい地獄をおもう
「現在」の引換券を現在に換えれないままあくびをひとつ
8月、左腕がとけはじめて
宵闇の重さに耐えきれなくなって隙間からこぼしだす夏至の指
3つ目の意味で理解を促してホテルの前で無口になって
ペンを持つ ペンはいつかは死ななけりゃいけないことの正しさのため
笑ってた、死ぬのが恐いと笑ってた (幽体離脱の世界なのにね)
どしゃぶりの闇にズックを濡らされて見たことのない世界をはしる
ローマ字で読んだ言葉は罵声語に似ていた、シャイン、君のなまえだ
<end>
第6回うおのめ文学賞 パビリオン−短歌 投稿作品