しろい いきつぎ
嘉村奈緒



 あなたは、荒れ狂った、広大な砂地に足を埋めて、飛ばされないように、大時化で、ドロドロとした朝の、ドロドロとした波に打たれて、気絶する、泥土の景色のようだと、あなたは言うから、ねえ、あなたは帰るの、って、私は遠くから聞いて、そうやって、大時化て、何匹もの魚がもまれて、ねじられた砂浜に打ちあがる

 追いつこうとして、しなびた足を振り上げるなどして、波は荒れ狂っていて、だから待って、って、しょうがないから泥土を泳ぐの

 朝から何も食べてなくて、おさかなが食べたい、って叫ぶと、そうだね、って笑う、あなたはぐいぐいと突き進んで、私を置いていってしまうだろうから、おさかなが食べたいって叫び続けて、泥土を必死にかきわける。そばでは波がねじれていて、私は怖くなって、待って、って、荒れ狂ったものを蹴飛ばして、風が強くて、皮膚が痛くて、しょうがないから、渦巻きみたいな声で、帰ろう、って



 あなたはたくましい足で砂地を進む、おさかなだね、って言うと、そうだね、って笑う、こんな場所で二人だね、って、そうだね、って、泳ぐの。バタフライして、あお向けになって、あなたも、私も、顔をグシャグシャにして、嵐の中、家路につくの


 


自由詩 しろい いきつぎ Copyright 嘉村奈緒 2005-07-20 17:25:48
notebook Home 戻る