丘の空
塔野夏子

悪い子にはなれなかった
投げやりにほどいた長い髪を風になびかせ
夏雲が縺れあう丘の空の下
夢をひずませて
立ち尽くしていただけ

「君」がきっと街からここまでさがしに来てくれるなんて
甘えていたかっただけ

傷つきやすさを思わせぶりに見せつけて
花のようにあざやかにひるがえすように
その胸にわたしを刻めたならよかったのに

夕暮れが近づいてきて
風になびいていた長い髪も
だんだん重くなってきて
だけど心はなびきやまなくて

縺れあう夏雲の色もせつなくなって
いつまで立ち尽くしても
でも泣いたりもできなかった
「君」がさがしに来てくれないことなんて
わかりきっていた

甘えてみたかっただけ

ただ夢を歪ませて
暗くなってゆく丘の空の下
何処へも帰りたくないなんて
投げやりに呟いてみただけ





自由詩 丘の空 Copyright 塔野夏子 2005-07-17 13:14:05
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