手毬唄
千波 一也
お嬢の小唄を
宙に放れば
おてんと様が照らしてくれる
小僧の小唄を
地に撞けば
根っこの隅々しらべてくれる
手毬唄、ひとつ
この手に優しい
中身かどうか
優しくこの手に帰るかどうか
婦人の小唄を
宙に放れば
そよそよ風がゆすってくれる
御仁の小唄を
地に撞けば
石ころたちがためしてくれる
手毬唄、ひとつ
この手に優しい
中身かどうか
優しくこの手に帰るかどうか
唄は たのしや
唄は ゆかしや
こころという名のまろやかな型
愛でるべき縁の
もたらす土産
あしたの唄を楽しみに待ちつつ
手毬唄、ひとつ
手毬唄、ひとつ