奇妙な果実
恋月 ぴの
僕が
奇妙な果実になったなら
マングローブの木にぶら下がり
絶え間なく聞こえくる
極楽鳥の求愛の詩
蒸し暑いのは
僕達の想い
秘密の遊戯に耽っては
むやみやたらに書き記す
ミナミトビハゼへの往復書簡
歪の字に伸びた遠心力
白い錠剤
カリカリと噛み砕き
ぶらりぶらりと風任せ
日がな一日空をながめ暮らす
熱帯特有のスコール
土砂降りの雨粒が
コツコツと
僕の体をノックする
やがて雨上がりの森に
フルーツバットの群れ顕れ
地上すれすれに飛び交っては
奇妙な果実の果肉を啄む
啄まれた果肉の奥から
白い体液滲み出し
幻覚に痺れた揚羽蝶の蛹
愛し合う極楽鳥の夢を歌う