*夕闇迫る*
かおる
摩天楼に乱反射する西日
お堀のみなもを揺らす
ビイドロの巨大なレゴの間に見える空
暮れなずむその時
夕焼け雲が小さな感傷のベルを押す
あの子の泣きべそ顔のほっぺは茜雲
見送り駅のホームで
東に向かう列車を睨んでいた
摩天楼に煌めく灯りは泪のユラメキ
ステッキ片手にゆっくりと歩く老紳士と
白いレースの日傘の御夫人の
長く伸びる二つの影に溶けていった憶いは
銀色
紅く黒く輝き 透明になっていく
すぐ脇を
ランドセルをかたかたさせて
子供が駆け抜けていった
おうちに急ぐ人々の足音が踏み砕いたのは
零れ落ちたあの時の夢と
そして
なんだったのだろう