冬眠
こしごえ

  チョコレート

チョコレートの包みを
あけたのは
退屈なカエルが
土の中から這い出て
鳴いたから


  スカーフ

ほめたら白髪しらがまじりの
老婆がくれた
紫色の
スカーフ
啄木鳥きつつきが「よろしよろし」と
木をつついています


  スープ

溜息まじりで 煙草の煙を吐きました
食パンちぎって南瓜のスープに浸します

年輪をかさねる
木々のうたをききながら


  サーカス

猫が一匹
こたつで寝てた
或る深夜
猫は
あの世へいって
いまじゃ
庭に埋まってる

サーカス小屋では大騒ぎ


  青

丸い月を
からすがほじくっている
月はやせて
青白くなる

死のニオイより生のニオイが
かくれている
生あたたかい
夕べ


  冬眠

うつろな目をした
少女がいった
「雪でやけどをしたのです。」
全身 結晶の跡がついている
カラッと晴れた 青空に
おちていく




          
個人サイト「As H System」
              詩集「遺伝子」掲載


自由詩 冬眠 Copyright こしごえ 2005-07-12 14:24:13
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