七人の男(手を振る男)
たもつ
何を忘れたかったのだろう
街に一つしかない小さな駅で
男は窓の外に向かって手を振った
無人のホームでは鉢植えに植えられた
カモミールの花がゆれるばかり
やがて男を乗せた列車が発車すると
駅はしいんと静まりかえる墓石になった
刻まれた名はかつて誰かによって
大事にされていたはずだが
今ではその名を呼ぶものもない
一面の草野原を走る列車は徐々に形を崩し
散り散りの砂になる
男は一粒の石英だった
あの時男は
ふと窓に映る自分に手を振ったのだ
自由詩
七人の男(手を振る男)
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たもつ
2005-07-12 08:32:02