もち
たもつ


もちを食べていたら
中から
ラケット二本と
シャトルが一つでてきた

正月は羽子板だよね
とか言いながら
僕らはいつまでも
バトミントンをし続けた

あの日
何回まで数えることが
できたのだろう

ただの退屈だ、と
誰にも
笑われることなく



+



もちを食べていたら
中から「もちの精」がでてきた
願いごとをいくつか
かなえろ
と言う

何故さ!
つっこむ間もなく
「もちの精」は勝手に願いごとを言う
とてもじゃないけどかなえられそうにもないし
期限があるわけでもないらしいので
放っておくことにする

友人に出した年賀状が一通
あて先不明で返送されてきた
元気でやってます
伝えたいのはそれだけだった



+



もちを食べていたら
自分がもちであることに気づいた
さっきまで同じパックに入っていた仲間を
ごめんよ、ごめんよ
と言いながら涙を流して食べている

もちがもちを食べるものだから
ぐちゃぐちゃに
くっついて
ひっついて
からみついて
どこからどこまでが自分なのかわからなくなる

そんな僕を君が食べている
ごめんなさい、ごめんなさい
って



+



もちも美味しいと感じるのは元旦くらいで
二日には白いご飯と味噌汁が恋しくなる
箸休めにここで一曲歌うことにする
けれど、その歌を耳で聴くことはできないだろう
だって
歌はいつも
心で聴くものだから



+



もちを食べる
中からは
ラケットも
シャトルも
「もちの精」も
出てくることはない
ましてや
僕はもちではないし
君も僕を食べたりはしない
そんな当たり前のことを幸せに感じるのは
一年のうちでも正月だけかもしれない
と、当たり前に思う

それから買っておいたラケットとシャトルで
君とバドミントンをする
数える必要はない
僕らが日々願うことなんて
たかが知れてる





自由詩 もち Copyright たもつ 2003-12-11 14:57:43
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