―飛ぶ そらを
びゅうびゅうと風の音を聴く
ルルる
おお
手をひろげ
風を身いっぱいにうける、ルル
はてぞない世界を
何ひとつもない この上を
風の期待にこたえる ルる ことは
耳朶も 眼球も この 指のさきまでも
赤 青の 細流うつくシく 透けだし タ、 タタタァ!
(おお、反った指のさキザキから ものも かたちも ヒュる、ルルる!
丸みオびながラニ 大地はるかにひろごり
爽やかに かぜ ひかり
が
ああこの身に ながリこむル とは!
僕の亡き
はびゅうびゅうと墜ちてし
石の
哀しヵ
地上にちいさな地蔵と影
落下音が
大洋にさびしくひとすじの尾を曳いたあと
爆心の地に眠りこむひとつの臓器
ゆめだけがのこる そらをとぶ と
この飛行者には
防護服がない 時計がない 識票がない
ポケットの手記からいっさいの記述は消え
黄ばんだ地図はやぶれ散り
喉に ゆびに絡みついたこひびとのロケットをも失くしてしまっている
ああ宿命!
おまえには天が暦がわりに与えた
宿命もないと
広漠としてとめどないゆうぐれが溢れテい
遠雷
まっくろにたちあがる積乱雲のうえを
ゆく