こころみ
るか

「かえして、ねえかえしてよ、あたしの世界。」
ばらばらになったのは、
あの日、
窓から自分の身体を放り投げたのは、
わたしたちという、世界そのものである。

あなたは、
蓬髪をさかだてて、
八月の黒い雨にぬれ、
へばりつく襤褸のなかで、
「どうしてわたしの顔は
どくろでないだろうか」
と、
今日、記憶の墓をふかく暴きながら、
頭蓋の窪みに溜まる光を
せめて まもりたいのですね?

こんなにも無力なわかいからだを
骸からうまれた骸の姉妹しか
みることのできないあわれな盲者を
海よ赦せ空よ赦せ
馨る葉と日の乱射よ ゆるせ

きこえている
繰り返し その命令を まだ柔らかだった
友の掌の約束を
わたしは 世界といい もういちど
ひろいあつめ うまれたいのです。


自由詩 こころみ Copyright るか 2005-07-06 23:33:31
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