さち子、痛いの
かなりや

放課後
自転車置き場の
あのトタン屋根のしたで
さち子は
昨日のことをふり払うように
歌っていた。
その姿は
青いペンキがはがれ始め、下の褐色が見えてきたトタンよりも
3倍は
痛々しかった。
というか、痛い人そのものだった。
ワン エン トゥー
ワン エン トゥー ダンサブルなリズム 脳で刻んで
やや深めのシワを眉間に寄せながら
さち子は歌い上げる
恋の歌とも、戦いの歌ともとれる歌を。
なぜだかはわからないけど
わかっているのは
ぼくが昨日さち子にちょっかい出したってことくらい。
そのせいかな
さち子は傷ついたのかな
そうだといいな
ぼくのせいでうんと傷ついて、うんと醜くなればいいな
ああ、他の人がたくさん来た
さち子がみんなからよけられて
一人きりだ
たくさんの白い目に見られて
一人きりだ
ああ、もう
そろそろかなあ


自由詩 さち子、痛いの Copyright かなりや 2005-07-06 19:23:12
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