おいしい水
haniwa

グラス一杯の水がある。
もし喉が渇いているのなら
それを一息に飲み干してしまってもいいだろう
なにしろ外は砂漠みたいに乾いている

けれどもその水は限りなく透明で
よく見ると別の世界が広がっていることがわかる
もしそれに気づいたのなら
そこから行ってしまってもいいだろう
なにしろ外はろくでもない連中でいっぱいだから

あるいはその水は雨みたいにグラスを濡らすほど冷たいので
もし体が火照ってしかたないのなら
頭からかぶってしまってもいいだろう
少しもったいないような気もするけれど
つまらないことで磨り減っちゃった頭を休ませるには十分すぎる気持ちよさだ

でもひょっとするとこの水は毒で
もしどうしても殺したいやつがいるのなら
今俺がやってるみたいにすればいい
いずれにせよこの水を見たときに何もしないでいられる人間なんていない

冷たくて潤して化粧を剥がして身を清めて透明で形を変えて流れていて風に吹かれて周りの空気を集めて一つの世界を終わらせて違う世界をつくって


自由詩 おいしい水 Copyright haniwa 2005-07-05 04:09:07
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