ゆめ。くろさわぱくり
いとう




こんな夢を見た。

月が嘘であることがばれる。
NASAあたりが作ったもので、実在しないのだ。月は。
投影装置か何かが故障して、全世界にばれてしまう。
月のあたりにいろんな機械が集中して、修理している。
夜、群がる蟻のような機械と、その作業をみつめる。
月の軌道がいっせいに映る。
半円の軌道に、たくさんの月が連なっている。映写のチェックらしい。
どうしてこんなものを作ったんだろうと思う。
思うだけで、感慨はない。理由もわからない、まま。



こんな夢を見た。

私は詩人だ。
詩というものでしか表現を行わない、のではなく、
私の表現がすべて詩になる。
私に触れたものすべてが詩になる。
部屋中が詩だらけになったので閉じこもる。
世界を詩で溢れさせてはいけない。
それは詩人の務めだ。
私は私の詩と部屋の中だけで戯れ続ける。
私は詩人なのだ。
世界を詩で溢れさせてはいけない。



こんな夢を見た。

麻薬捜査官の私は犯人をビルの中に追い詰める。
激しい銃撃戦の末、犯人を逮捕。
しかしそれは私を陥れる罠だったのだ。
ビルを出ると私が犯人と間違われていて、
すっかり包囲されている。山ほどの弾を浴びる。
私は首だけになり、野晒しになる。何故かまだ生きている。

生きたまま、首だけのまま、数十年が過ぎる。
数十年間、動けないまま風景を見続ける。
何もなかった場所に人が集まり、街ができる。
その過程を動けないまま見続ける。



こんな夢を見た。

妻に灰皿で叩かれる。
大きな硝子の灰皿でがんがん叩かれる。
けれど血は出ない。
五年寄り添った妻にがんがん叩かれる。
とても痛い。
何故叩かれるのかわからない。
妻はとても怒っている。



こんな夢を見た。

私は革命グループの一員で、二つの計画を練る。同時多発ゲリラだ。
ひとつは新幹線爆破。もうひとつは自衛隊からのミサイル奪取。
私は後者の計画に参加する。
ミサイル運搬中に別の自衛隊員を装い、
ミサイルとでんでん太鼓を交換するのだ。
輸送計画が変更になったと車両を止め、
このでんでん太鼓を近くの保育園へ運搬するよう命令する。
作戦は成功。ミサイルを奪取する。
しかし新幹線爆破のチームが失敗して公安に捕まる。
そこから計画がばれ、私たちも捕まり、尋問を受ける。
尋問を受けるが、私は仲間の情報をしゃべらない。黙秘だ。
そして公安の上層部に私の親族がいるらしく、
そのコネから私だけが解放される。
アジトに戻ると、何故おまえだけ釈放されたのだと吊るし上げられる。
何か取引をしたんだろうと責められる。
もちろん私の言うことなど誰も信用しない。
何を喋ったんだと詰め寄られる。



こんな夢を見た。

眠っていたら、別れた彼女が戻ってきた。
泣きながらごめんなさいと謝っている。
もちろん許す。許すも何も、まだ好きなのだ。
やり直せるものならやり直したい。
ありがとうと言って抱きしめる。
嬉しくて涙が出る。
と、そこで目が覚める。夢だったのだ。
隣りでは彼女が眠っている。
私は泣いている。
こんな夢を見たと彼女に告げると、
「いなくなったりしないよ」と、
笑いながら抱きしめてくれる。
と、そこで目が覚める。それもまた夢だったのだ。

隣りには誰もいない。私は独りだ。
それは夢ではなかった。






未詩・独白 ゆめ。くろさわぱくり Copyright いとう 2003-12-09 21:13:15
notebook Home 戻る