奏朝
木立 悟




灰は青く巻き取られ
奏でるものと奏でられるもの
かわるがわる入れ替わり
奏でるものもまた響き
明ける光に重なってゆく


小さな声が
小さな世界が
現われては消え現われる
朝に降りそそぐ朝焼けの音
静かに分かれつづける音


緑の雨を花は昇り
白い雨に空へ届く
にじむふたつの線の色
高く細く行き来する色


灰の隙間の青のすべてに
金の文字の輪が浮かび
花と雨とに揺れつづけ
昇るもの降りるものを見つめている
雨を追う晴れ
晴れを追う雨を見つめている


屋根の下から空を見上げ
音の羽はぽつりと濡れる
器に満ちる雨を震わせ
頬と首すじをまだらに照らし
あたたかくむずがゆく鳴いている
ふたたびはばたく日に鳴いている


文字を手のひらに受けながら
あえて昇らないものの微笑みがあり
それぞれに離れ かがやいている
隔たりに降る雨と火と晴れ
沈むことのない足跡の群れ
たくさんのなかのひとつと
たくさんのなかのひとつを出会わせ
たくさんのなかの
新たなひとつを奏でてゆく







自由詩 奏朝 Copyright 木立 悟 2005-07-02 16:46:21
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