形なきものにかたちを与えるように
渡邉建志

 定型に望みを賭ける
 形なきものにかたちを与えるように


 カメラ無し三脚立てて五歩下がり 
 瞼が切り取る秋の夕暮れ


 君のこと好きで好きで気が狂いそう
 君の字に宿る君のたましい


「後ろから抱きつく私は誰でしょう」
「短歌タンか!短歌タンだね!」


 夜のバスガールと高速走るバス 
 カーテンはくらく締められたまま


 スカボローフェアに君も行きますか 
 悲しくなるからきっと行かない


 手をとって歩いた土地を再訪す
 至るところに見える人影


 遠いと言い放て 遠い
 小さく、痰を吐き捨てるように


 悲しいので君に会いたくありません
 桜が散って夏が来るまで


 溶けていく緑の魚が溶けていく
 脈打ちながら、脈打ちながら、


 何事を為したいか分からず
 友人の背中ばかりが遠のいていく


 簡単な問いを繰り返す季節です
 なぜ生きるのかなぜ生きるのか


 朝 ドアを出て行くような気軽さで
 窓から出て行けそうな気がした







短歌 形なきものにかたちを与えるように Copyright 渡邉建志 2005-07-02 09:50:43
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