misanthropy
塔野夏子
光源のない白い光に満ちた中を
球や三角錐や立方体の闇が
行進する
思考線をよぎる空中魚族
(この椅子に坐るといつも
感応しようとしすぎてneuroticになるんだ)
その視軸たちを
輻輳させてはいけない
焦点を灼きぬいてしまうから
虚空へと辷り去る実験塔
――いいえ 復讐など考えてはおりません
青白い霧を纏って
吊された散開星団が
忘却の速度で廻転する
(どのみちすべてがやがて
粒子状の世界に還元されてゆくんだ)
misanthropy:人ぎらいの意 neurotic:極度に神経質な、神経症の、の意
ネット詩誌「三度のメシより朝ごはん」33号および個人サイト「Tower117」掲載