misanthropy
塔野夏子

光源のない白い光に満ちた中を
球や三角錐や立方体の闇が
行進する

思考線をよぎる空中魚族

(この椅子に坐るといつも
 感応しようとしすぎてneuroticになるんだ)

その視軸たちを
輻輳させてはいけない
焦点を灼きぬいてしまうから

虚空へと辷り去る実験塔

――いいえ 復讐など考えてはおりません

青白い霧を纏って
吊された散開星団が
忘却の速度で廻転する

(どのみちすべてがやがて
 粒子状の世界に還元されてゆくんだ)



misanthropy:人ぎらいの意 neurotic:極度に神経質な、神経症の、の意

ネット詩誌「三度のメシより朝ごはん」33号および個人サイト「Tower117」掲載





自由詩 misanthropy Copyright 塔野夏子 2005-06-29 22:35:15
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