イカサマ 
梼瀬チカ


  イカサマ

占い師が私の手相を見て言う
「あなたは二度結婚しますよ」
一度ならともかく
二度だなんてとんでもない話だ
昨日嘘をついて会社を休んだ事を思い出した
ゆっくりと私の手の平を触りながら
「生命線がすごく薄くて短い これは若い内に死ぬかもしれませんねえ」
電話で私は苦しそうな咳をして風邪の振りをした
「あなた病気を持ってませんか?」
なんだかそう言えばとか有りもしない病気をいってしまいそうになる
黙っている私を占い師はじっと見ている
上司に嘘はばれているんだろうか?
判りたいのに知りたいのに
不安になって怖くなって
それでも尋ねたいのは
『私が…



まさか』
どこからか声が聞こえてきて
私はまた還っている
こうやって砦を守りながら
薄い生命線をじっと見つめる
タイマーがリミットを知らせて鳴る
「ハイ三千円ね」
その占い師の顔を見ている内に
したり顔でおまえの人生全て判っていると想っただろ?」
と聞こえた気がして
占い師がイカサマ師に見えてくる
あんたっだってそうなんだろうと言いながらニヤリとして
私が金を払うと
「どうも有り難ね」
いつの間にか私の顔した
イカサマ師はそう言って
笑った








自由詩 イカサマ  Copyright 梼瀬チカ 2005-06-29 06:34:15
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