俺たちには土曜日(が半分)しかない
クリ

むかしむかしあるところに土曜日の国がありました
場所は逆上がりの国(王女 湯川潮音)とポミポミ国(王女 小中かな子)の中間で
国土は喜屋武村アリーナ307個分もありましたからとても広いです
国歌はトム・ウェイツの
 (Looking For) The Heart Of Saturday Night
でしたが、国民たちは法に背いて密かに、氣志團の
 俺たちには土曜日しかない
を歌っていたものです。どっちもそれぞれいい曲なのですが

インディアン(インド人ではなくネイティブ・アメリカン)の口伝によりますと
かつて土曜日はちゃんと24時間あった とされています
なぜ? インディアンは文字を持たなかったから口で伝える以外に…
えっ、その理由じゃなくって24時間の理由? すぃません、 えーっと
それではハンドンという言葉から始めましょうか
土曜日は古代には「ハンドン」と言われていました
土曜日の国のその当時の人たちは、新語を作るのがとても苦手でした
「いけてるメンズ」から「イケメン」
「着信メロディー」から「着メロ」
「パンティーだけのストライキ」から「パンスト」など
ふたつの言葉の各々の最初の二音を持ってきてしか作れなかったので
さて「ハンドン」です。当然これは「ハン」と「ドン」に分かれます
「ハン」は「半」、つまり「半分」です。問題は「ドン」
当時土曜日の国と交易のあったオレンダという国では
日曜日のことを「ゾンターク(ハ)」と呼んでいました
「ク(ハ)」は、クとハの混じった音です
「クハ」とか「ハク」と言ってはいけません。同時です
この「ゾンターク(ハ)」が「ドンタク」になりました
また異説もあり「どんなに行ってもタクラマカン砂漠」から来たとも言われますが
信憑性、意味論的に言及する必要はないでしょう
彼らはもちろん「ドンタク」が「日曜日・休日」であることを知っていました
彼らにとってももともと日曜日はまるまる一日休む日であり
土曜日は午前中だけ労働する日でありました
労働過剰になっていたせいであり、いわゆる「生産調整」だったのです
代わりに彼らはこの時間帯に子供を生産したものです
そのうち誰かが土曜日のことを「半分だけ日曜日」と言い出しました
「半分だけドンタク」→「半ドンタク」→「ハンドン」
というわけです。
ある年その国の議会で「ハンドン法制化」が議論され始めたのです
とてもどうでもいいことだったのですが、なんせ提出したのが非民党です
嫌いなくせに選挙にいかない青襟族ではなく
目先の私利私欲でせっせこ投票してしまう地方の脚絆族を囲う党です
意味もなく法案は成立してしまいました
それからというもの土曜日は正午までとなり正午以降は
「法的に」日曜日になってしまったのです
つまり土曜日は12時間しかないのに、日曜日は36時間もあるのです
ああ、これは法律の不備でしたが、一度決まったものはなかなか修正できません
これで困ったのが太陽やその他の星です
なんせ今までほとんど24時間で天球を一周してきたものが
いきなり土曜日はたった12時間で一周しなければならずそれはそれはてんてこまい
このとき崩壊したのが第五惑星で、そのかけらは「アステロイドベルト」となりました
私もそのベルトで今ズボンを吊っていますよ、余談ですが
余談と言えばそもそもこのお話自体が余談の寄せ集めであり…
脱線しました。脱線と言えばそもそもこのお話自体が…
もういいですか。そうですか
さて、これでは星々があまりにしんどかろうと地球も手伝ってあげました
土曜日だけは自転速度を速めたのです
当然重力は減少しましたからいろいろなことが起きました
巨大な恐竜も土曜日だけは自壊せずに立っていられましたし
1Gでは絶対に飛べない翼竜もすいすい空を翔けました
「天翔る」というヤマトコトバができたのもこの影響です
イカロスが墜落したのもこのときです
ガリバーがラピュタを訪れたのもこの土曜日です
賢明なみなさんならば話の視点がどんどんずれていっていることに気づかれたと思います
きっと「半透明の王女のためのパヴァーヌ」のように「続く」となるんだろ、とも
構わず続けます。そのまえに焼酎のルイボス・ティー割りを作りましょうか?
レッサー(レッド)パンダのみならずシロナガスクジラさえ立つことができました
アパトサウルスやメガロサウルスも逆立ちしました
重要なのはそれらがすべて土曜日だった、ということです
土曜日は天国でした。それは明らかでした
これを「土天明快」あるいは「土天解明」と言います(オプショナル)
土曜天国はあまりに自由奔放であったがために諍いも絶えませんでした
(ちなみに「諍い」が読めない人はもっと勉強する必要があります)
「土曜の夜は僕の生きがい」という歌を英訳するとき
"Saturday Night's Alright (For Fighting)"となって
(For Fighting)が付くのはこのせいです
また、無理をするゆえの病もありました
これがいわゆる「土曜熱」でした。学名は…、言わせないで下さい

そんなこんなで時間が流れました(便宜上)
今は、土曜日はちゃんと24時間に戻りました
なぜなら土曜日も休みとなってしまったからです
生産調整かつ消費意欲向上であります
だから土曜日は天国ではなくなってしまいました
土曜日の国は消えました。土曜日の人たちは世界中に散らばりました
何も空を飛べないし、クジラは座礁して圧死します
僕たちは土曜日が半分だった頃のものを失いましたが
土曜日が「ドンタク」だった頃に戻ったわけでもありません
ドンタクだった頃の土曜日の夜、こっそり起きている子供たちには
魔法が使えたと言います
ドンタクの「もう寝ていなきゃならない時間」になっても
彼らが眠たい目をこすりながらも必死に起きている限り
いつまでも午前零時はこなかったのです

ドンタクは、そんな日でした
今ではそれを覚えている老人も、数えるほどしかいなくなりました
彼らは、つまり僕たちは、年に一度復活祭の前の土曜日の夜
一同に集い、みんなで歌を歌います

 Heart Of Saturday Night
 Saturday Night's Alright
 ぐるぐる危ない土曜日の夜は始まったばかり〜
 S A T U R D A Y NIGHT!
 D O Y O UBI しかない!
 S A T U R D A Y NIGHT!
 D O Y O UBI しかない!




                  Kuri, Kipple : 2005.06.28


未詩・独白 俺たちには土曜日(が半分)しかない Copyright クリ 2005-06-28 21:54:47
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