あなた
こしごえ

あなた
小首をかしげて
地面の底の
深く流れる息遣いを
その深い色した瞳に感じて
あら、生きていたのね
なんて
おちょこでしっとり日本酒を
なめては池の月影を
ため息ついては細くなり
肌は、うす紅さしていう

今日はわたしの命日で
あなたはそうして酔っている
遺影へ
ぽつり
ぽつりと話しかけて
うふふ
なんて
美しく
微笑む
あなた
左手の
小指が
じんじんと
高鳴りを打つ
悲しさの悲しさの無い
幸せの幸せの幸せの涙
この
かすんだ意識に光を灯す

また
生者は、輝いて見えるのだ。
当の本人は、そのことに気づかない。
しかし、
生者の中でも、そのことに気づく者がいて、
それが死んだ
わたしには、ついに解明できずにいるのだけれど、
そんな人と会えた者は、
幸せ者なんだと
つくづく感じる。

あなたは
しおれそうに悲しみ
あなたは
はちきれんばかりにいか
あなたは
ころころと笑い
それでいて
わたしの誕生日をおぼえていてくれて
ささやかだけれど
すてきなプレゼントをくれる
そんな
あなたがすき。

いつのまにか
畳の上に
つっぷして寝てしまった
あなた
疲れているんだね
と見えないけれど
羽毛布団をかける


自由詩 あなた Copyright こしごえ 2005-06-28 12:46:33
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