白紙
嘉村奈緒


いつもララしてる

おねーさんのお目目は困ったくらいの蜻蛉球で
少しずつ村の人が齧っていくものだから
少しずつ世界が薄くなっていったけれども
その度に縞模様が増えていくので
おねーさんはますます綺麗な色でいるしかなかった
村役場では
暮れに現れた鍾乳洞に誰が入っていくかでもめていた
あの紫の場所は
鍾乳洞なんかじゃないのに
しょっぱい空の日に
パペットをぶら下げてついて行った
いつから関節が木組み式になっていたのか忘れてしまった
ネジを覗くと
紫のねーさんが薄く笑っていた
その向こうの
村役場の人はみんな関節が木組み式になってしまったので
思い思いに帰っていくのを
困ってしまう蜻蛉球を齧りながら見ていた
いつもララしてる
夕闇が始まると村の人は窓を固くしめる
音も殺す
組まれた柵の上 両足で空気の入れ替えをしている
ねーさん
て呼ぶと、ねーさんは縞模様な声で返事をした
キキイって返事をして
油さしをくださいって言った

少しだけの風が吹くと両足が所在無く揺れる
空気の入れ替え してる
鍾乳洞に行こうかどうか迷ったけれど
もう縞模様な左手じゃいけない
しばらくぼんやりしていたら
世界がぼんやりしているのだと気づいた
ララしてる
もう一度ねーさん、て呼ぶ
縞模様の右手で瑠璃を落とす
瑠璃は転がる




未詩・独白 白紙 Copyright 嘉村奈緒 2003-12-08 01:55:50
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