ねなぎ

走ったけれど
間に合わなかった

道の傍らで
途方に暮れていた

側に立っているのは
コンクリートの塊で支えられた
錆びた看板

バスは未だやってこないらしい

乗り遅れたのが
何時だったか

時刻表の文字を
必死に読もうとするのだが
雨に滲んでしまって
一向に読めない

雨が降ったのは
何時だったか

こんな時に限って
手ぶらでいた

何処で鞄を
忘れたのだろうか

薄曇の道の端で
周りには
草むらが
揺れている

佇んだのは
何時だったか

こんな時に
誰もやって来ない

バスはやって来る気配すらない

皹の入ったアスファルトを
見つめているだけ

何処へ行こうと
していたのだろうか

諦めにも似たような
憔悴間が
じっとりとして
服に染み付いていく

何時から待って
いるのだろうか

不安定に
傾く気がしていた
何処か重たさが
重心を変えていく

手前で締め切られて
そのまま行ってしまった

思い出せないのは
何時からだろうか

そして二度と
戻ってこなかった

いつの日にかと
思っていた

群生する青さが
揺らめいている

風も吹かない
蒸すような匂いが
そこかしこから
立ち込めている

忘れられたのは
何時頃だったか

バスが来る事は無いだろう

傍らに立つ鉄に
掛っているのは
何だったろうか

道の向こうは
霞んでしまい

気がつけば
途方に暮れている

必死に走ったけれど
間に合わなかった


自由詩Copyright ねなぎ 2005-06-22 00:16:35
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