蒼の槍
yuma

この東京に久しぶりに降った雪の後の空は
どうにもいつも見ている空と違い溜息が出る。

こんなに綺麗な空にも関わらず
山手線を走る電車は今日も止まった。
それはつまり、また1人この世界からいなくなったということで。
JRの車掌も大変だなってつぶやいた。
飲み友達は笑いながら納得して
僕に、別の方向から行けばよかったなって呟いた。
全くだと思いながら僕は家路について。

同じ事を息子に話すと
電車を滅多に使わない息子にはそれの辛さがわからないらしくて。
俺にどうしろっての?って言いながらも飽きずに僕の話聞いてて。

でもほんとは僕らはJRの車掌の事より自分達の事の方が心配で。
死んでしまった奴に、なんで、こんなところで死んだんだって言いたくて。
でも、そんなこと言うのはさすがに憚られて。

結局、僕はまた『事故』の多いこの電車に乗っている。
帰り際に顔を上げると、まだ空は澄み切っていて。
僕もなんだか、プラットホームから飛び降りたくなった。
空から蒼の槍が深く胸に突き刺さったのかもしれない。


自由詩 蒼の槍 Copyright yuma 2005-06-21 22:26:35
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