優しい鳥
つきのいし.
感じない掌の上に
鳴かない鳥が
人のように瞼を閉じる
冷たい雨の降る
コンクリートの上で
静かに眠りにつく
戯れるように
温度を残して
*
おかあさんが
前に似たようなことがあったと
話してくれた
体をさすったりしたけど
生き返らなかったと
庭の土の中に
埋めてあげたらしい
鳥がしんだのは初めてだった
前に拾って帰った時は
ランドセルをしょっていた時で
道端に転がっているすずめを拾って
風呂場に持っていって洗って
じぶんの皮膚科の薬を塗ってあげたら
いきなり生き返って
格子から飛んでいった
*
鳥は
自由ばかりもなく飛んでいる
土の上だけで生きられたなら
羽は要らなかったかもしれない
曖昧な風に乗るのは
きつかったろう
*
大人になって
見つけた鳥は
汚れた屋上にいた
大きくて 黒くて
生きていたら怖いと思いながら
近づいたら怖くなくなった
濡れた体は重たくて
手にとると
膨らんでいてやさしかった
優しい鳥だった
やっとずっと
土にいても
だいじょうぶになった
おかえりなさい
鳥であるまえに生まれた
おまえであるように