右手と左手のための協奏曲
クリ

右手と左手のための協奏曲より


朝の上澄みですれ違う人たちは 夏の陽にさらされて空へと消えてゆき
夜の底の澱でつながる人たちは 死にも似た安寧と渾然とする
僕たちはどこにあるのだろうか 僕たちは動いては消えるのか留まっては残るのか
自分より尊かったものの残滓を 僕たちは
発酵させるのか 腐敗させるのか
僕たちはどこへと進みだすのだろう 暗闇の中で
一歩先は虚空かもしれない 一秒後には足下は崩壊するかもしれない

僕たちの屍が 後悔も名声も苦痛も快楽も憎しみも味わうすべを知らないならば
僕たちは 何をすべきか
いや 僕たちは何がしたいのか分かるかい?
とても簡単な 万物理論
時空を隔てて 愛したい愛されたい

僕たちが知識よりも 知恵を授かるならば
僕たちは僕たちより貴いものを きっと産むのだろう
そう 祈ろう
もし君に左手がなくても 誰かの右手を借りれば一緒に祈ることができる



                                      Kuri, Kipple : 2005.06.20


自由詩 右手と左手のための協奏曲 Copyright クリ 2005-06-20 03:02:00
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