雨が積もると
霜天
玄関のドアを引く
駆け込むようにして進入してくる朝は
少しだけ暗い白
今日も天辺まで積み上がった世界で
濡れたままの人たちが歩いていく
傘を忘れたわけでもなく
濡れることに気付かないわけでもなく
ただそこで、息をしている
繰り返しの雨の音
例えば、で伸ばした指先が
順番の季節をなぞっていくと
座り込んだ僕らのいた頃は
積もった雨がこの街の遥か上まで
今にもあふれそうになっている
指先はいつもそこで止まる
溺れないようにと静かにもがくのは
いつだって僕らの方だったような
なぞられる毎日はカレンダーの色を真似て
静かに息をする
ただそれを繰り返す
どこまでも積もった雨の底
どこかで零れる音が聞こえる
僕らは潰されるわけでもなく
ほんの少しの重みを感じながら
雨が積もると、街は変われない
ここから、すべてが零れてしまうまでに
靴を乾かさないと、いけない