雨が積もると
霜天

玄関のドアを引く
駆け込むようにして進入してくる朝は
少しだけ暗い白
今日も天辺まで積み上がった世界で
濡れたままの人たちが歩いていく

傘を忘れたわけでもなく
濡れることに気付かないわけでもなく

ただそこで、息をしている
繰り返しの雨の音


例えば、で伸ばした指先が
順番の季節をなぞっていくと
座り込んだ僕らのいた頃は
積もった雨がこの街の遥か上まで
今にもあふれそうになっている

指先はいつもそこで止まる
溺れないようにと静かにもがくのは

いつだって僕らの方だったような
なぞられる毎日はカレンダーの色を真似て


静かに息をする
ただそれを繰り返す
どこまでも積もった雨の底
どこかで零れる音が聞こえる
僕らは潰されるわけでもなく
ほんの少しの重みを感じながら


雨が積もると、街は変われない
ここから、すべてが零れてしまうまでに
靴を乾かさないと、いけない


自由詩 雨が積もると Copyright 霜天 2005-06-20 01:51:53
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