六月の羽根飾り
プテラノドン

六月のつかの間に澄んだ夜更けの丘から大勢の骸骨が這い出ててくる
そのどれもが出来損ないで、ところどころ豚や犬の骨も混じっていた。
実際彼等は見世物小屋へ身売りしようと考えていたが
現れて二ヶ月、依然無一文のままで、仕方なくみんな
自分で体を梁に縛りつけてやり過ごしている。その姿から、
かつての神秘的な妖しさは滑稽なものでしかなくなり
伝説の類はとうに失われたかのように見えた。
ただ一人、思慮深き少女を除いて。
少女は、しょっちゅうくずれる骸骨の骨をはめ直してやった。
骸骨達はお礼にインディアンの羽飾りをくれた、
数十年前、トーテムポールにかけられていたやつを。
 ある日、骸骨達はいなくなった。野良犬がくわえて持って行ったと母は言う。
夜になると少女は時々、羽飾りをつけて丘の上に立った。
彼等との再会を願って?とにかく
そこで話は終わってしまう。
すべては、月明かりに照らされる羽根飾りをつけた少女の表情が、
恐怖を表すにはちょっとばかし優しすぎたせいで。
 「ところで、トーテムポールって何だ?」本を片手に支配人が訊ねる。
 「純真無垢の象徴さ」ベルボーイの男はそう言うと、
フロントの灯りを消して通りを眺める。町並みはいかにも
といった静けさで、新しい少女を探している。


自由詩 六月の羽根飾り Copyright プテラノドン 2005-06-18 05:52:32
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