せなか
緋史


足のつめを切ろうと丸くなる

その はだかの 背中

連なる背骨の緩急
張りつめたなめらかな皮膚
緩やかな凹凸をしめす筋肉
見えない熱い血流

 

触れては いけない

なんて 無防備な
手を伸ばせばすぐに届く距離

 

けれど触れない
触れてはいけない この距離

 
さっき磨いたばかりの歯をたてようか
爪をたてようか
優しく撫でようか



気にしていないふりで視線は確実にその広い せなか

気分は獲物を前にした禁欲的な獣



無遠慮でしたたかな視線に気づかない主は

パチンパチンと軽快な音を立てつづける


そんな夏の午後


自由詩 せなか Copyright 緋史 2005-06-15 20:01:47
notebook Home 戻る