生まれる朝に
木立 悟




銀に生まれる朝が来て
蒼や灰の約束は
果たされたまま
果たされぬまま
みんな静かに並びはじめる


ひろい光の場所があり
滴は滴のままでいる
新しい歌がひとつあり
球面をゆるく震わせて
新しい景になってゆく


空は眠り 空は目覚め
雨はわずかに揺れ動く
扉は消えて
音は届き
まるく響き


水と呼吸と小さな鼓
こだまは滴にはね返り
光は光に葉の輪を重ね
やわらかな列のうしろへと
せせらぎのように加わって


朝に呼ばれ
名前を得
空に招かれ
銀をまとう
蒼や灰の そのままに


いのりを抄う手のひらへ
求め願うもののまぶたへ
果たされたまま
果たされぬまま
約束はまるく降りそそぐ









自由詩 生まれる朝に Copyright 木立 悟 2005-06-13 15:28:22
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