六月は雨
本木はじめ

ぼくたちの出会いを事故と名づければたちまちエアーバッグが邪魔で


消えかかる蛍光灯の真似をするきみの瞬きずっと見ていた


きみのその背中の刺青の蝶を捕らえるために彫りし蜘蛛の巣


きみが孫悟空だったらいいのにな枕に残った一本の髪


渦巻いて近づいてくる台風のごときぼくらの夏のあやまち


向かいあい僕は僕へと泳ぐだろう流されてゆく水中メガネ


分け合ったフランスパンはどこでしょう飲み込みきれない別れのことば


届かないきみへの想いヘッドフォンしたままプールの水底にいる


きみがもしまぼろしならばぼくもまたまぼろしだろう六月は雨





短歌 六月は雨 Copyright 本木はじめ 2005-06-09 23:08:03
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