水無月セピア
野月歩




猫の目のなかに言葉をさがしてた世界がわたしの部屋だけの夜


はてしなく優しいきみが眠るときおとぎ話の幕が開いて


鍵穴を探す深夜の部屋の中小さな鍵の彷徨う行進曲マーチ


首すぢに赤い花びら咲き乱れ着物の裾にまとう残り香


のどけきひ睡蓮のあかあざやかに描くあなたの笑顔と共に


高音部うしなう少年少女からしゃぼんは枯れるセピアの翳り


くゆらせた香のけむりの終わるとき涸れる真夏の霧の湖


墨汁の遠い山影に息を吸い吐き出すあなたの白いためいき


しんみりと泉の上に湧き出づる雲の模様をかきまぜている


紫陽花の影の部分を見落として明るい花よとわらう水無月








短歌 水無月セピア Copyright 野月歩 2005-06-06 16:48:56
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