炎翼
中沢人鳥

紙は燃えることを欲していた
水に濡れることではなく

雫が落ちるたび
繊維は屈辱に震えた
染み込むとは すなわち侵されること
耐えるとは すなわち形骸であること

飛ぶために乾くのではない
燃えるために乾くのだ

鳶は醜い
その旋回は怠惰の円弧に過ぎない
鷲は傲慢だ
高みとはただの距離に過ぎない

されば 金の鵄を
太陽に向かって放て
翼が溶けるその瞬きにのみ
紙は絹になり
炎は羽搏きになる

皺だらけの和紙よ
お前は美しい
ただし 燃え尽きる覚悟においてのみ

机には何も残すな
灰すら残すな
飛翔とは そういうことだ


自由詩 炎翼 Copyright 中沢人鳥 2026-03-07 16:06:40
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