炎翼
中沢人鳥
紙は燃えることを欲していた
水に濡れることではなく
雫が落ちるたび
繊維は屈辱に震えた
染み込むとは すなわち侵されること
耐えるとは すなわち形骸であること
飛ぶために乾くのではない
燃えるために乾くのだ
鳶は醜い
その旋回は怠惰の円弧に過ぎない
鷲は傲慢だ
高みとはただの距離に過ぎない
されば 金の鵄を
太陽に向かって放て
翼が溶けるその瞬きにのみ
紙は絹になり
炎は羽搏きになる
皺だらけの和紙よ
お前は美しい
ただし 燃え尽きる覚悟においてのみ
机には何も残すな
灰すら残すな
飛翔とは そういうことだ