はちみつレモン
森田拓也

 さようなら、僕が会った場面
  さようなら、僕が会った情景

        ── 中村光太郎







うつむいて仔猫のしっぽ見ていると
  少し気持ちが まあるくなったよ


まな板でレモンを切ると青春で
  白菜切るとホームドラマで


音のない世界に来てもトクトクと
  鳴り続けてる僕の心臓


五分ほど無言電話に付き合えば
  気が済んだのかプツリと切れた


防犯のカメラにピースしていたら
  小指なき人出てきて怒る


やさしさを求めるように丁寧に
  ホットケーキにナイフを入れて


風に耳たてる仔猫にアドバイス
  この世のこわさ 知らずに育て


缶コーラいくらぺこっと潰しても
  もう戻れない人生の春


ただいまと言えばあなたのまなざしで
  先に仔猫がふりむいていた


短歌 はちみつレモン Copyright 森田拓也 2026-02-26 03:10:51
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