父の死と私
伊藤透雪

喧嘩した翌日に
何の言葉も交わさず
倒れて入院し亡骸と
なって帰って来た、
胸はまだ命の温もり
を抱えていた
生きた残火で膨れて
跳ねて行きそうな体
大きな体躯を入れて
抑える棺桶は特注だ

経を唱える僧侶たち
の作った声に辟易し
虚ろな気持ちで下を
向いてた、足が痛い

お父さんが死んだ
墓に納まった骨から
お父さんは感じない

納まったお父さんが
空へ飛んで行くのか
思い出す度心揺れて
若いままの姿で笑う
お父さんを思い出し
ジンジンと沁みる胸
にずるいよ、と言葉
を投げてようやく涙
でザアザアと瞼の裏
が熱くなった

北国はまだ雪が降り
寒い中で倒れたとき
頭が痛みでいっぱい
で病院に行くなんて
健康自慢は悪い習慣
だよ

酒と塩辛いアテでは
私を理解できなくて
悩んだ暗さは晴れず
思春期の苛立ちには
父親として散々悩む
ばかりだっただろう

大人になった私は
梅咲く地で暮らし
私もいつか一人で倒れ
死んでいくのだなあと
思う年になったよ
もうすぐ命日だね



自由詩 父の死と私 Copyright 伊藤透雪 2026-02-23 10:23:18
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