JAM
リリー

 憤りのままに
 閉めてしまった冷蔵庫の中で
 ビンのぶつかりあう音
 微細なひび割れでもあったのか
 ジャム瓶だけが割れた

 ねっとりしたトパーズ色と
 雑ざって宝石の様に耀う
 硝子の破片
 
 数日前、手間暇かけて作った逸品が
 駄目になったことなど
 頭から消え去り
 憤懣の負の波紋からも解き放たれて
 あるがままのジャムへ
 目を奪われる

 昼ちかく
 窓辺でぼんやりと屈折する陽ざしに
 誘われて見下ろす
 鉄道沿いの歩道の往来

 裸の枝を晒す桜の木々に
 空はやさしい呪文をとなえている
 その薄片が、私の貧しい一日の
 隙間にも充ちてきて
 
 


自由詩 JAM Copyright リリー 2026-02-16 11:29:41
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