ぶつだんくようのひ
ばんざわ くにお

あるところに
じっかのあきやうるおとこあり
ちちははすでにしにたえて
たずねくるひともなきあきやなり
そのたたずまい
みるからにふるくおおきくおそろし
なにびともちかよることなし
おとこ
なにゆえかおさなきより
このいえのぶつだんこわし
いわく
このよのものとはおもえず
ぶつだんに
あのよへのとびらあり
きんいろのさまいとおそろし
このたび
じっかのあきやをうるをえて
ぶつだんくようの
こうえいをえるものなり
おとこ
こなゆきまうさむきひに
はやぶつだんくようのひなりて
くようするおしょうをまちおりしも
ちとはやきじこく
げんかんにひとのけはいありしが
おしょうにあらず
ぜんしんしろしょうぞくの
ねんぶつとなえるろうばなり
おとこきょうがくし
いきたけはいなし
ろうばいわく
このいえのぶつだんによばれた
なむあみだぶつ なむあみだぶつ
おとこわれにかえりぬれば
ろうばすでにうせりて
ぶつだんくようつつがなくおえたり
ぶつだんいづこえかさりぬ
おとこ
ありがたや ありがたやと
あきやをいでしが
わすれものありて
げんかんひきどの
かぎをまわすも
ひきどはかいじょうせず
たちまち
おまえをにどといれるものかと
うられたあきやのおおごえきこえたり
おとこおどろきおそれ
ほうほうのていで
そのばをたちさるものなり
まことに
ぶつだんさりしあきや
おそろしきものなり
ぶつだんのほうりきにて
あきやおさめられしが
ぶつだんさりぬれば
あきや
そのほんしょうをあらわし
あれはてざることかぎりなし
やがて
ひとでなきものたちあつまりて
すみにけり


【後記】
実家の空き家を売る為、先月、実家で仏壇供養(魂抜き)の法要を行いました。
その日は外で粉雪が舞う寒い日でした。
和尚さんの到着予定時刻の1時間も前に玄関に人の気配がしたので
行ってみると、家の玄関内に菅笠をかぶった全身白装束の老婆が
念仏をとなえて立っていました。
まるであの世から仏壇を迎えにきたようなその姿に私の心臓は
止まりそうになりました。
そして仏壇供養を終え、仏壇を搬出してもらった後、家を出る時に
玄関を施錠しました。
玄関の合鍵は4本あったので、この鍵を不動産業者に渡すために
念のために合鍵で開錠できるかどうか試したところ、どの鍵でも
開錠できません。
さっき施錠した鍵で開錠しようとしましたが、これでも開錠できません。
その時、「お前を二度と入れるものか」と言われたような気がして
ぞっとしました。
この詩はそれを思い出して生まれた詩です。














自由詩 ぶつだんくようのひ Copyright ばんざわ くにお 2026-02-14 05:49:43
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