じっかのあきやうるおとこ
ばんざわ くにお
あるところに
じっかのあきやうるおとこあり
ちちははすでにしにたえて
たずねくるひともなきあきやなり
そのたたずまい
みるからにふるくおおきくおそろし
なにびともちかよることなし
あるときおとこ
ひさびさにかえりしを
いえにひとりとまりけり
よるざしきにてくつろぎしを
ろうかおともなく
あるくひとあり
おとこおどろきふるえしを
あるくひとおとこにいへり
いわく
にかいにて
しょせいのころよりげしゅくして
すみたりしものなり
そのすがた
はくはつのちいさきおきなのごとくなり
やがてにかいへのぼるかいだん
おともなくあがりて
くらやみのなかにうせり
おとこわれにかえりしに
すでによるのあけはじめのころなり
そっこくぶつだんあけ
おがみしも
そのひはぶつだんくようのひなり
そうそうにくようすまわせ
ねんごろにともない
ぶつだんはうせにけり
おとこついに
このあきや
かのおきなごと
ひとにうりけり
しかしながら
おとこいわく
げにおそろしきは
ひとのこころなり
このあきやにしゅうちゃくし
かのおきなみた
わがこころに
かのおきな
うつりすめり
【後記】
実家の空き家の母屋の2階は住んでいた両親もほとんど
使用していなく、建築した当時のまま時が止まったように
真新しいままになっていました。
帰省した時に時々この2階に上がることがありましたが、
いつも非常な恐怖を感じて上がっていたのを覚えています。
誰も使用していないことが、返って何かが住んでいるような
気がして、恐怖を感じていました。
昼間に上がっても怖いので、夜に上がるとなおさら恐怖でした。
この詩はそのことを思い出した時に生まれた詩です。