『きつねの襟巻、人魚のうた』 第六章:ひろわれた石
板谷みきょう

ずっと後の時代。

ひとりの子が、
渚で小さな石を拾いました。

石は光らず輝きもしません。
でしたが、
子は決して手放しませんでした。

誰かを救えなかった夜、
その石は掌の中で、
同じ重さを返しました。

子は老い、石を庭の土に埋め、
名を残さず世を去りました。

その場所では
草が育ち、花は咲きませんでした。

同じ秋の日、
川を伝って赤い紅葉が届きました。

世界は変わりませんでした。

それでも、石は
そこにずっうと、在りました。


散文(批評随筆小説等) 『きつねの襟巻、人魚のうた』 第六章:ひろわれた石 Copyright 板谷みきょう 2026-02-05 21:14:42
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
童話モドキ