『きつねの襟巻、人魚のうた』 第四章:龍にならなかった蛇
板谷みきょう

世界に欠けが生まれたころ。

屏風山の青蛇は、
それを正そうとしました。

すべてを知る龍になれば、
道は見えると思ったのです。

蛇は身を削り、
荒れる海を越えようとしました。

けれど海の前で、
蛇は立ち止まりました。

龍になるとは、救えぬものを、
救えぬまま見送ることでした。

蛇は、その道を選びませんでした。

神にもならず、
世界も変えられず、
入り江にとどまりました。

そうして蛇は、
泣く者のそばに坐るのでした。


散文(批評随筆小説等) 『きつねの襟巻、人魚のうた』 第四章:龍にならなかった蛇 Copyright 板谷みきょう 2026-02-04 18:33:46
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