星にならなかった河童 最終章 星になれない河童
板谷みきょう

星になった河童を、見た者はいない。

夜空に、それらしい星もなかった。

見つかったのは、下流の淀みだった。

名もない場所に、
壊れた体が引っかかっていた。
しかし
誰のものかは、分からなかった。

銀色の鱗に覆われたその体は、
もはや人の形をしていなかった。

分からないままにしておくことが、
それこそが、正しかったのだ。

だから人々は、物語を選んだ。

「河童は星になった。」

そう信じることで、
村は今日も数を数えずに済む。

夜、川の音がやさしい時、
年寄りたちが空を見上げて
「今日も、静かな星だ。」
星が、誰のものでもないことを
知りながら言う。

その喉を、
銀色に濁った水が通り過ぎていく。

そして橋の杭では、
忘れるために結ばれた鈴が、
誰にも聞かれず揺れていた。


散文(批評随筆小説等) 星にならなかった河童 最終章 星になれない河童 Copyright 板谷みきょう 2026-02-02 20:43:01
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