火の鳥
ホロウ・シカエルボク


俺が欲しているのはいつだって、眉間をぶち抜かれるような衝撃なのさ、そんなものどこにでもあるわけじゃないから自分で作った方が手っ取り早い、自分自身に向けて言葉の弾丸を次々に撃ち込むのさ、薬莢を吐き出しては装填して狙いを定めるんだ、どうだい、目の前で俺の眉間に狙いをつけているのは見紛う事なき俺自身だ、それはそれは嬉しそうな顔をして俺の頭を吹っ飛ばそうとしている、俺は銃口の内側の細工をじっと眺めている、何度も撃たれた、何度だって、数え切れないくらい撃ち抜かれた、だから俺はそれを怖いと思うことはもうない、その先にどんな世界が待っているのか、そいつを心待ちにしてさえいる、でもだからって、撃たれることに慣れることはない、そりゃああまりいい気分じゃない、だけどさ、人生なんてなにもかもお望みどおりに進むわけじゃない、だったら、見返りがあるのなら少しくらい痛い思いをすることには何の異存もない、時々そういうこともなければ緊張感を失ってしまう、慣れたことをやり続けるだけならもう止めちまったって構わないんだ、もう一度それをやる意味だ、もう一度それをやる為に強烈な刺激が必要なのさ、まだ見たことの無いもの、感じたことのないスタイル、どこかで何かが俺を待っている、でも下手な迎え方をしたらそいつは踵を返して行っちまう、出来得る限りの準備を整えておかなければいけない、もしかしたらそいつを迎えることによって俺はある程度俺ではなくなってしまうかもしれない、でもそんなことを気にしてどうなる?自分で自分を檻に入れるくらいなら大人しく社会の底辺でゴミを漁っていたって良い、でも俺はそんな暮らしには飽き飽きしてるんだ、いつだって今を越える何かを探している、もっと先に行ける仕掛、もっと先に行けるマインド、変わらないのは変化だけだって、ルー・リードが九〇年代のインタビューで答えてた、まだ若い俺はその言葉に深い感銘を受けたものさ、そしてその言葉の印象は、彼の歳を越えそうな今になっても少しも変わっちゃいない、「少しも変わっちゃいない」なんて、ここで使うには間抜けな言葉かもしれないけれどね、でも俺はいつだって、そうだよな、その通りだよなって思うんだ、他人のイメージなんかどうだっていい、誰かの人形になる為にこんなことをしているわけじゃない、火薬の匂いが欲しい、爆発のショックで古くなった脳味噌を吹っ飛ばすのさ、そしてそいつが再構成される間に、イメージを練り直すんだ、イメージはイメージのままで置いておけばいい、その方が果てしなく言葉を生み出せる、ど真ん中に当てないようにすることだよ、正解を出すことが目的じゃない、そもそも正解なんてものはない、いや、瞬間瞬間にはそういうものもあるかもしれない、でもそいつらは正解で在り続けることは出来ない、人間が時間を移動し続ける限り解答欄は次々に書き換えられていく、たった一度で何かを仕上げた気になるようなら今すぐにすべてを捨ててここから出て行くべきだよ、踊りの稽古とは違うんだ、手本通りにやったからオッケーなんてそんな甘い話じゃない、それはまるで主旨が違うことなんだ、まだそんな自分以外の誰かへの憧れや尊敬なんかで出来たスタイルに固執するつもりなのか?俺さっき言ったよな、自分で自分を檻に入れることはないって、そいつは一度中に入ってしまったら外から鍵を掛けられてしまって二度と外に出ることは出来ないんだぜ、俺は一日たりとも人生を消化試合で終わらせるつもりはない、次から次へと展開を用意するのさ、辻褄なんて合わせる必要は無い、リアルなんて矛盾してるくらいが丁度良いんだ、常に展開を用意するのさ、動かし続けていれば錆び付くことはないし反応だって良くなる、瞬間瞬間に起こることのすべてに反応し続けることが出来るようになるのさ、よく少しぐらい未熟な方が良い、なんてしたり顔の連中は言うけれど、俺はそうは思わない、自分自身についてはとことん上手くなるべきさ、上手く操ってその時の最良のパフォーマンスを叩き出すんだ、その躍動が、血肉の蠢きが俺の理想とする世界だ、少しは上手くなってきた気がするよ、もっと違うものを、もっと新しいものを出せるような気がするんだ、準備は出来たか?弾は込められた、目の前に居る俺によく似た男が指先に力を込めている、全身で受け止めろ、すべてを吹っ飛ばしてしまえ、肉片と血が年月をかけて雨と風に洗われたあと、そこには新しい展開がご褒美のように転がっているだろう、俺はそれを丁寧に拾い上げて、ポケットにしまうだろう、そいつのウェイトや手触りが今すぐに何かを語ることはないだろう、でもそれは間違いなく、俺が次を求める時新しい弾丸となって、もしかしたら俺を木端微塵にするかもしれないぜ、準備は出来たか?新しい舞台の始まりだ、俺の叫びが底をついて、喉笛が血を吹き上げたら、お前たちは立ち上がって拍手を送っておくれ。



自由詩 火の鳥 Copyright ホロウ・シカエルボク 2026-02-01 17:42:02
notebook Home